トランプ版グレートリセットとは

ドル・ショック

1971年8月の新しい経済政策の発表は世界を驚かせた。ニクソンは景気対策で好ましい成果を挙げることが出来なかった。そして1971年夏にはインフレ、高い失業率、不況というスタグフレーションに苦しめられて、中華人民共和国への電撃的な訪問を発表した直後に、上下両院の共和党議員との懇談の席で国内の経済状況についての苦言と注文を出されていた。そして8月に発表した新経済政策で誰も想像しなかったドルの金交換停止、輸入課徴金制度の設立、物価、賃金の凍結という思い切った施策を打ち出した。

これらは不況から抜け出せないアメリカを取り巻く状況で、ドルの切り下げが避けられない局面で、単なるドル平価の問題とせず、多国間での通貨調整という場にして劇的に行うことで、当面の問題解決を狙ったものであった。しかし、結局は固定相場制が崩れて変動相場制に完全に移行して、アメリカが再び強い経済力を発揮するのは1980年代に入ってからであった。

また、1974年には財政赤字を賄うのにも必要なドルの裏付けのためにキッシンジャー国務長官とともにサウジアラビアを訪問してファイサル国王やファハド・ビン=アブドゥルアズィーズ第二副首相兼内相との会談で原油をドル建て決済で安定的に供給するサウジアラビアに米国は安全保障を提供する協定(ワシントン・リヤド密約)を結んでオイルダラーを確立することでドル防衛に成功した。

トランプ版グレートリセット

米ドルの通貨価値が半分に切り下げられた場合(例えば、1ドル=80円、1ビットコイン=5万ドル、1オンス=1500ドルになるような状況)、米国および世界経済に非常に大きな影響を及ぼします。以下にその影響と、大統領がそれを実行できるかについて説明します。


米ドル通貨切り下げの影響

1. 米国内への影響

  • 輸出産業の恩恵
    米ドルが安くなると、米国製品は国際市場で競争力を増します。これにより、輸出企業の利益が増大し、製造業などの輸出関連産業にプラスとなります。
  • 輸入品価格の高騰
    輸入品が割高になるため、消費者物価指数(CPI)が上昇します。特にエネルギー(石油など)や食品の輸入依存が高い商品でインフレが加速する可能性があります。
  • 実質的な生活水準の低下
    ドルの購買力低下により、米国内の生活費が上昇し、低所得層への影響が深刻になる恐れがあります。
  • 債務負担の軽減
    米ドル建ての債務(特に政府債務)が実質的に軽減されます。例えば、50兆ドルの債務がドル価値切り下げによって実質25兆ドルに見えるようになる可能性があります。

2. 世界経済への影響

  • ドル基軸通貨の信頼低下
    ドルが基軸通貨であることへの信頼が揺らぎ、各国が他の通貨(ユーロ、人民元、ゴールド、仮想通貨など)への移行を加速させる可能性があります。
  • 他国の通貨危機
    ドル切り下げにより、ドルにペッグしている通貨(特に発展途上国の通貨)が不安定化し、経済危機に陥る国が増える可能性があります。
  • 世界的なインフレ
    原油や穀物など多くの商品がドル建てで取引されているため、ドル切り下げがグローバルな商品価格を押し上げ、世界的なインフレが進む恐れがあります。

大統領の権限で通貨切り下げが可能か?

直接的には不可能

米ドルの価値を「意図的に半減」させる政策は、大統領の単独の権限では実行できません。以下の理由があります:

  • 通貨価値は市場で決定される
    現代の為替相場は基本的に自由市場で需給に基づいて決まります。政府が直接操作するのは非常に難しいです。
  • 連邦準備制度(FRB)の独立性
    米国では金融政策(利上げ・利下げや量的緩和)はFRBが担当しており、大統領はその決定に直接介入できません。

間接的な手段

ただし、大統領が間接的にドル安を誘導する方法はあります:

  1. 財政政策の利用
    巨額の財政赤字を増やす政策を進めることで、ドル安を招く可能性があります。
  2. 貿易政策や為替政策の変更
    他国との貿易協定や関税政策を通じてドル価値を調整する動き。
  3. FRBへの政治的圧力
    歴代の大統領がインフレ抑制や利下げ政策をFRBに求めたように、ドル安を促す金融政策を強く訴える。

ドル切り下げのシナリオに対する評価

米ドルを意図的に切り下げる政策は短期的に米国の輸出促進や債務削減には有効ですが、基軸通貨としての信頼を失い、長期的にはドルの地位が脅かされる危険性があります。そのため、米国政府が意図的にドルを大幅に切り下げる可能性は非常に低いと考えられます。

もしこれが強行されれば、世界経済は大きな混乱に陥り、新たな通貨秩序や基軸通貨の移行を余儀なくされるでしょう。

ニクソンショックの時の上下院は民主党

ニクソンショック(1971年8月15日)の当時、アメリカの上下両院は民主党が多数派でした。共和党出身のリチャード・ニクソン大統領が政権を握っていましたが、議会では野党の民主党が支配的な状況でした。


ニクソンショックの背景

ニクソンショックとは、ニクソン大統領が以下の3つの主要政策を発表したことを指します:

  1. 金とドルの交換停止(ブレトンウッズ体制の終了)
  2. 輸入品に対する10%の追加課税
  3. 賃金・物価の90日間凍結

これらはアメリカ経済の国際競争力を高め、貿易赤字やインフレ問題に対応するために打ち出された政策でした。


当時の議会構成

以下に、ニクソンショック時の議会構成を示します:

上院(Senate)

  • 民主党: 54議席
  • 共和党: 44議席 (民主党が多数派)

下院(House of Representatives)

  • 民主党: 255議席
  • 共和党: 180議席 (民主党が多数派)

議会との関係

ニクソン大統領は、民主党が支配する議会と頻繁に対立しながら政策を進めていました。しかし、ニクソンショックの政策は「大統領令」によるもので、議会の直接的な承認は必要ありませんでした。この点で、議会の構成にかかわらず、独自に経済政策を実施できたのです。

この背景には、当時の経済危機の深刻さがあり、議会もニクソン政権の緊急措置に対して比較的理解を示していました。ただし、長期的には議会との対立が激化し、ウォーターゲート事件を含むスキャンダルがその後のニクソン政権の崩壊に繋がります。

ウォーターゲート事件(Watergate Scandal)

ウォーターゲート事件(Watergate Scandal)は、アメリカ政治史上最大級のスキャンダルの一つで、リチャード・ニクソン大統領が辞任に追い込まれた直接的な原因となった出来事です。この事件は、1972年に発覚し、1974年にニクソンが辞任するまでの約2年間、アメリカ政治を揺るがしました。


事件の概要

1972年6月17日:ウォーターゲートビル侵入事件

  • ワシントンD.C.の「ウォーターゲートビル」にある民主党全国委員会本部に、5人の男が侵入しているところを警備員が発見し、逮捕されました。
  • 彼らは盗聴器を仕掛ける目的で侵入しており、ニクソンの再選委員会(CRP、Committee to Re-Elect the President)との関係が浮上しました。

証拠隠滅と妨害工作

  • ニクソン政権は、この侵入事件との関与を否定しつつ、関与した人物への金銭支払い(いわゆる「口止め料」)や、FBIによる捜査の妨害を試みました。
  • ニクソン自身が事件の隠蔽工作を指示していたことが後に明らかになります。

事件の展開

  1. 調査の進展(1973年)
    • 報道機関(特にワシントン・ポスト紙)の調査により、ニクソン政権が事件に関与していた可能性が指摘されました。
    • 上院がウォーターゲート特別委員会を設置し、調査を開始しました。
  2. ホワイトハウス録音システムの存在発覚
    • 1973年7月、元大統領補佐官がホワイトハウスに録音システムが設置されており、ニクソンがすべての会話を録音していると証言しました。
    • 録音テープは事件の核心的な証拠と見なされましたが、ニクソンはテープの提出を拒否しました。
  3. 「土曜日の夜の虐殺」(1973年10月)
    • ニクソンは特別検察官アーチボルド・コックスを解任しようとしましたが、司法長官と副長官が抗議して辞任する事態が発生。これが「土曜日の夜の虐殺」と呼ばれる事件です。
    • この行動は、ニクソンが違法行為を隠蔽しようとしているとの批判をさらに強めました。
  4. 「喫煙銃」テープの公開(1974年)
    • 最終的に録音テープの一部が公開され、その中でニクソンがウォーターゲート事件の隠蔽を指示していた証拠(「喫煙銃」と呼ばれる決定的証拠)が明らかになりました。

ニクソン辞任(1974年8月9日)

  • 下院司法委員会はニクソンの弾劾手続きを開始しました。
    • 弾劾の理由:
      1. 司法妨害
      2. 権力の乱用
      3. 議会への協力拒否
  • 弾劾手続きが下院で可決される見通しとなり、ニクソンは大統領職を辞任しました。
  • これにより、彼はアメリカ史上初の辞任した大統領となりました。

フォード大統領による恩赦

  • ニクソンの辞任後、副大統領だったジェラルド・フォードが大統領に昇格しました。
  • 1974年9月、フォード大統領はニクソンに対して「全面的な恩赦」を与え、刑事責任を免除しました。この決定は非常に物議を醸しましたが、フォードは「国を前進させるために必要だった」と説明しました。

事件の影響

  1. 政治的不信感の増大
    • アメリカ国民の政治への信頼が大きく損なわれ、「政府の透明性」の必要性が強く叫ばれるようになりました。
  2. 制度改革
    • 連邦選挙法の改正など、政治献金や選挙活動の透明性を確保するための制度改革が進みました。
  3. メディアの影響力の増加
    • ジャーナリストの調査報道が政治を変える力を持つことが示され、メディアの役割が再評価されました。

ウォーターゲート事件は、権力の濫用がもたらす危険性を示す教訓として、現代に至るまで語り継がれています。

1ドル80円に切り下げられたら、日本経済はどうなるか

1ドル=80円という状況に、米ドルの切り下げが原因で急激に到達した場合、日本経済には深刻な影響が予想されます。日本は輸出主導型の経済構造を持つため、為替レートが大きく円高に振れることは多方面でデメリットをもたらします。


日本経済への主な影響

1. 輸出企業への打撃

  • 円高になると、日本製品は海外市場で価格競争力を失います。
    • 例:自動車や電機メーカーなど、日本の主要輸出産業が大打撃を受ける可能性があります。
  • 輸出の減少は企業収益を圧迫し、国内の雇用や設備投資にも悪影響を及ぼします。

2. 輸入コストの低下

  • 円高は輸入品の価格を引き下げるため、原材料やエネルギーの輸入コストが削減されます。
    • 例:石油や天然ガスなど、エネルギーコストが下がるため、製造業や運輸業には一部恩恵がある可能性があります。
  • 消費者にとっては、輸入品(食料品や電化製品など)の価格が下がることから、生活コストが低下します。

3. デフレ圧力の強化

  • 円高により、輸入品の価格が下がることでインフレ率が低下します。
  • 日本経済は長期間デフレと戦ってきましたが、円高によってさらにデフレ圧力が強まる可能性があります。
    • デフレが続けば、企業の収益が減少し、賃金の引き下げや雇用の減少につながるリスクがあります。

4. 観光業への悪影響

  • 円高により、日本が外国人観光客にとって割高な旅行先となるため、訪日外国人数が減少する可能性があります。
  • 一方で、円高は日本人が海外旅行や海外での消費をしやすくするため、海外での支出が増える可能性があります。

5. 国内金融市場への影響

  • 株価への悪影響:日本企業の輸出減少を織り込んで、日経平均株価が下落する可能性が高いです。
  • 日銀の政策余地縮小:円高によるデフレ圧力を抑えるために、日銀がさらなる金融緩和策を講じる必要性が高まりますが、すでに政策金利が低水準であるため、効果的な手段が限られる恐れがあります。

日本政府・日銀の対応策

  1. 為替介入
    • 日本政府がドル買い・円売り介入を行い、円高を抑制しようとする可能性があります。
    • ただし、介入が一時的な効果にとどまり、持続的な円高を防ぐのは難しい場合があります。
  2. 財政政策の強化
    • 国内需要を喚起するために、大規模な公共投資や減税政策を実施する可能性があります。
  3. 金融政策の緩和
    • 日銀が国債買い入れを拡大し、さらなる量的緩和策を講じる可能性があります。
    • 円高を牽制するために、マイナス金利政策のさらなる深掘りも検討されるかもしれません。

全体的な評価

1ドル=80円という極端な円高は、日本経済にとって深刻な挑戦となるでしょう。輸出依存が高い日本にとって、輸出減少がもたらす負の影響が大きく、特に製造業が中心的な経済地域での雇用や経済成長に悪影響を与えることが懸念されます。

一方で、エネルギーや輸入品価格の低下は消費者や一部産業にとってプラスとなるため、短期的には一部の恩恵もあるでしょう。しかし、全体としてデフレリスクが強まり、経済停滞が長期化する可能性が高いです。

このような急激な為替変動が起こった場合、日本政府と日銀が迅速かつ連携した対応を取ることが求められます。

オルカン、S&P500投資はどうなるか

1ドル=80円に切り下げられた場合、新NISAでオルカン(全世界株式)やS&P500に投資している日本の投資家の資産価値がどれくらい影響を受けるかは、「為替ヘッジの有無」や「ドル建て資産の割合」によります。


1. 為替の影響と資産の価値

日本人がドル建て資産(例:S&P500や米国株)に投資している場合、為替レートの円高(例:1ドル=160円から80円への変動)は、円換算での評価額に直接的な影響を与えます

  • 為替ヘッジなしの場合
    為替レートが円高(ドル安)になると、ドル建て資産を円に換算したときの価値は減少します。例えば、1ドル=160円の時に10,000ドル分の資産があれば円換算で160万円ですが、1ドル=80円になると同じ10,000ドルは80万円に目減りします。
    • この場合、資産の円換算価値は半減します。
  • 為替ヘッジありの場合
    一部のファンド(為替ヘッジ型)は、為替変動の影響を抑える仕組みが組み込まれています。この場合、ドル安になっても円換算での資産価値への影響は限定的です。ただし、ヘッジコストがかかるため、ファンドのパフォーマンスが若干下がる可能性があります。

2. オルカンとS&P500の違い

  • オルカン(全世界株式)
    オルカンは世界中の株式市場に分散投資しているため、米ドル以外の通貨(ユーロ、人民元、ポンドなど)や新興国市場にも分散されています。したがって、S&P500と比べて為替変動の影響は分散されますが、それでもドル安が資産価値を押し下げる可能性が高いです(ドルの割合が大きいため)。
  • S&P500
    S&P500は米国の株式指数に連動しており、ドル建て資産に投資するため、円高(ドル安)の影響を直接的に受けます。したがって、為替ヘッジなしの場合、円換算価値が大幅に下がるリスクが高いです。

3. 為替と株式市場の相互作用

為替変動だけでなく、ドル安が株式市場自体に与える影響も考慮する必要があります。

  • ドル安のプラス効果
    ドル安は米国企業の輸出競争力を高めるため、S&P500に含まれる多国籍企業の収益増加につながる可能性があります。この場合、ドル建てでの資産価値が上昇し、為替の影響を一部相殺することも考えられます。
  • ドル安のマイナス効果
    一方で、ドル基軸通貨としての信頼が低下すると、米国株式市場全体が不安定になるリスクもあります。

4. 資産が「半減」するかの判断

為替変動による直接的な円換算価値の減少(例:1ドル=160円から80円で半減)は可能性として高いですが、次の要因によって実際の影響は異なります:

  1. 為替ヘッジの有無
    ヘッジなしの場合、ドル建て資産は円換算で半減するリスクが高いです。
  2. ファンドの通貨分散
    オルカンは通貨分散が効いているため、完全には半減しない可能性があります。
  3. 株式市場の反応
    ドル安が米国株式市場を押し上げる場合、株価上昇が為替の影響を一部相殺することがあります。

結論

  • **S&P500(為替ヘッジなし)**に投資している場合、円換算資産は為替の影響でほぼ半減する可能性が高いです。
  • オルカンでは、ドル以外の通貨や地域への分散投資により、影響は軽減されるものの、ドル安の影響を受けて資産価値が減少する可能性があります。
  • 為替ヘッジを行うファンドを選んでいる場合、円高の影響は限定的です。

投資家はこうした為替リスクを考慮し、長期的な資産形成の視点でポートフォリオを見直すことが重要です。

トランプが大統領就任直後に、各国に関税を課し、中国に60%、カナダとメキシコに25%、日本に10% これはドル安を招きくのか。

トランプ政権が大統領就任直後に提案したような大規模な関税政策は、ドル安を招く可能性があるかどうかは、その政策がどのように各国の経済や市場心理に影響を及ぼすかによります。以下に、関税がドルに与える影響を整理します。


関税がドル安を招く要因

  1. 貿易収支の改善(理論的なドル安の要因)
    • 関税を課すと、輸入が減少し、貿易収支が改善する可能性があります。
    • 貿易収支が改善すると、アメリカからのドル流出が減少します。このため、理論上、ドルの供給が減り、ドル高につながる可能性があります。
    • しかし、現実では、他国が報復関税を課すことでアメリカの輸出も減少し、貿易収支が改善しない場合、ドル安の圧力が高まる可能性があります。
  2. 市場心理の悪化
    • 高関税政策が各国間の貿易摩擦を激化させ、グローバル経済の成長が鈍化するとの懸念が強まると、ドルが売られやすくなる可能性があります。
    • 特に、ドルはしばしば「高金利通貨」として投資家に魅力的とされますが、経済成長が減速する見通しが強まれば、ドルの魅力が低下し、ドル安につながることがあります。
  3. インフレ懸念
    • 関税の導入により、アメリカ国内の輸入品価格が上昇し、インフレ圧力が高まる可能性があります。
    • インフレが進むと、ドルの購買力が低下するため、相対的なドル安を招く要因になることがあります。
    • また、インフレ対策としてFRB(連邦準備制度)が利上げを加速する場合もありますが、これが実体経済に悪影響を及ぼす場合、ドル安につながる可能性があります。

関税がドル高を招く可能性

  1. 資金のドル回帰(安全資産としてのドル)
    • グローバルな貿易摩擦が激化する中で、不確実性が増大した場合、投資家は「安全資産」であるドルを買う傾向があります。
    • トランプ政権初期のような不確実性が高まる状況では、ドル高が一時的に進行する可能性があります。
  2. 米国への資本流入
    • 高関税政策により、国内市場を保護する政策が強化され、外国企業がアメリカ国内での生産を増やすことで、アメリカへの投資が促進される可能性があります。
    • 投資資本がアメリカに流入することでドル需要が高まり、ドル高になる可能性があります。

国別の影響とドルの動き

  1. 中国(60%の関税)
    • 米中貿易摩擦が激化すれば、中国からアメリカへの輸出が大幅に減少する一方、中国側が報復措置を講じる可能性があります。
    • 米中摩擦の拡大は、世界経済全体のリスクを高め、短期的には「リスク回避のドル買い」が発生するかもしれません。
  2. カナダ・メキシコ(25%の関税)
    • NAFTA(現USMCA)のパートナーであるこれらの国に高関税を課せば、アメリカ国内の製品価格上昇やサプライチェーンの混乱が懸念されます。
    • 中長期的には、アメリカ経済の競争力低下が懸念され、ドル安の要因となる可能性があります。
  3. 日本(10%の関税)
    • 日本からの輸出が抑制される一方で、米国での日本企業の現地生産が進む可能性があります。
    • 日本円はしばしば「安全通貨」としてドルと競合するため、円高・ドル安が進む可能性があります。

結論:ドル安かドル高か?

  1. 短期的にはドル高の可能性
    • 高関税政策が引き起こす貿易摩擦や市場の不安定化により、「安全資産」としてのドル需要が増加し、短期的にドル高が進む可能性があります。
  2. 中長期的にはドル安の可能性
    • 貿易摩擦が激化し、アメリカ経済の成長が鈍化する場合、ドルの相対的な価値が低下し、ドル安の方向に向かう可能性があります。
    • 特に報復関税やアメリカ国内のインフレ加速が起これば、ドル安のリスクが高まります。

トランプ政権の関税政策は短期的な影響と中長期的な影響が異なるため、ドル相場の動きは状況に応じて変動するでしょう。

米国の輸入品で大きいものは。米国がインフレ対策で原油の掘削や放出を増やす可能性は

米国の輸入品で大きいもの

米国の輸入品は多岐にわたりますが、主に以下の分野が大きな割合を占めています(2023年時点のデータを参考に)。

1. 電子機器

  • スマートフォン、コンピュータ、電子部品などが輸入品の中で大きな割合を占めます。
  • 主な輸入相手国は中国、メキシコ、ベトナムなど。

2. 自動車と部品

  • 完成車や自動車部品の輸入が多く、特に日本、カナダ、ドイツ、メキシコからの輸入が大きいです。

3. 機械類

  • 工業用機械や医療機器など、高度な技術を要する製品が多い。
  • 主な輸入元は中国、ドイツ、日本。

4. 原油や石油製品

  • 米国は原油を輸出もしていますが、国内需要を補うために一部の原油や石油製品を輸入しています。
  • 主な輸入元はカナダ、サウジアラビア、メキシコ。

5. 衣料品とアクセサリー

  • 衣料品やアクセサリーなどの消費財は、主に中国、バングラデシュ、ベトナムなどから輸入されています。

6. 農産物と食品

  • コーヒー、果物、海産物などが輸入されています。輸入元はメキシコ、カナダ、ブラジルなど。

米国のインフレ対策としての原油掘削・放出

インフレ対策として、米国政府が原油の掘削や備蓄放出を増やすかどうかは、次の要因に左右されます。

1. 原油価格とインフレの関係

  • 原油価格はエネルギーコストや輸送コストに大きく影響を与えるため、インフレ抑制には重要な要素です。
  • 高騰した原油価格が消費者物価指数(CPI)を押し上げる場合、原油の供給を増やす政策が取られる可能性があります。

2. 原油掘削の増加

  • バイデン政権は環境政策を重視しており、新規の掘削許可には慎重な姿勢を取っています。ただし、エネルギー価格がインフレを加速させる場合、一部で掘削許可の緩和が行われる可能性があります。
  • シェールオイル(頁岩油)の採掘は、民間企業が主体となって行っており、政府の政策に完全には依存しません。ただし、高価格が続けば企業は採算を見て掘削量を増やします。

3. 戦略石油備蓄(SPR)の放出

  • 米国は「戦略石油備蓄(SPR)」を保有しており、緊急時や価格抑制のために放出を行うことがあります。
    • 例:2022年のロシア・ウクライナ戦争に伴う原油価格の高騰時、バイデン政権はSPRから大規模な放出を行いました。
  • ただし、SPRは有限であり、過剰な放出は長期的な備えを損なうリスクがあります。そのため、慎重な判断が求められます。

4. 再生可能エネルギーと長期的戦略

  • バイデン政権は再生可能エネルギーへの移行を進めており、石油依存からの脱却を目指しています。ただし、短期的な価格抑制策として原油供給の調整が行われる可能性があります。

結論

  • 米国の主要輸入品には電子機器、自動車、原油などが含まれます。これらの輸入品価格がインフレに与える影響は大きいです。
  • 原油の掘削や放出は、インフレ対策として一時的に実施される可能性がありますが、長期的には環境政策やエネルギー転換とのバランスが取られるでしょう。

米国内でインフレが進んでも、トランプが圧力をかけFRBに利上げをさせない場合

もし米国内でインフレが進んでいるにもかかわらず、トランプ大統領(仮に再任された場合)がFRBに圧力をかけて利上げを行わせない場合、以下のような影響が予想されます。


1. 短期的影響

インフレの加速

  • 利上げをしない場合、金利が低水準のまま維持されるため、借入コストが安く、消費や投資が活発になり続けます。
  • その結果、需要が過剰になり、物価がさらに上昇する可能性が高まります。

ドル安の進行

  • 金利が上がらないと、ドルの魅力が低下し、ドル安が進む可能性があります。
  • ドル安により輸出企業は競争力を持ちますが、輸入品の価格が上昇し、物価上昇(輸入インフレ)をさらに加速させるリスクがあります。

株式市場の過熱

  • 金利が低いと、投資家が株式や不動産などのリスク資産に資金を振り向けやすくなります。その結果、これらの市場が過熱し、バブルのリスクが高まる可能性があります。

2. 中期的影響

経済の過熱と後の反動

  • 利上げを抑えたままで経済を拡大させ続けると、インフレが制御不能になる可能性があります。このような状況では、消費者の購買力が低下し、景気後退(リセッション)が起こりやすくなります。
  • もしインフレが持続的に進むと、FRBが後になって急激な利上げを迫られるリスクがあります。これが経済にショックを与える可能性があります。

国債市場への影響

  • 利上げを抑制することで、米国債の金利が低水準にとどまります。短期的には政府の借入コストを抑えるメリットがありますが、投資家が「米国はインフレ制御能力を失った」と判断すると、米国債が売られる可能性があります。
  • 米国債が売られると長期金利が上昇し、住宅ローンや企業の資金調達コストが増加する可能性があります。

3. 長期的影響

信用リスクの上昇

  • FRBが独立性を失い、政治的な圧力で政策を決めると市場からの信頼を失う可能性があります。これにより、アメリカの金融システム全体の信頼性が低下するリスクがあります。

ドルの基軸通貨としての地位の低下

  • 米国がインフレを制御できない状況が続くと、ドルの価値に対する信頼が低下します。他の国がドルに代わる通貨(例えば人民元やユーロ、BRICS通貨など)を選ぶ動きが進む可能性があります。

4. 政治的影響

  • トランプ大統領が利上げを拒むことで、短期的に景気を刺激することは可能ですが、長期的に経済のバランスを崩すリスクが高まります。
  • 経済が過熱した後に急激なリセッションが発生すれば、政権やその政策への批判が強まり、次の選挙での支持率低下につながる可能性があります。

総括

もしインフレが進んでいるにもかかわらず利上げをしない場合、短期的には景気刺激効果が続きますが、中期から長期的には以下の問題が発生する可能性が高いです:

  1. インフレが加速し、制御不能になるリスク
  2. ドル安の進行と輸入インフレの悪化
  3. バブル崩壊や景気後退
  4. FRBやドルへの信頼低下

最終的に、インフレを抑えるためには急激な利上げが必要となり、その結果、経済へのダメージが大きくなる可能性があります。

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