🕒 遅延選択実験とは?過去は変えられるのか?
量子力学の世界には、私たちの日常の常識を覆すような不思議な実験があります。その中でも特に興味深いのが、「遅延選択実験(Delayed Choice Experiment)」です。
「過去は変えられるのか?」という哲学的な問いにもつながるこの実験について、分かりやすく紹介します。
🔍 二重スリット実験の不思議

まずは、量子力学の代表的な実験である「二重スリット実験」について少し触れておきましょう。
簡単に言うと、電子や光子といった小さな粒子が、2つのスリットを通るときに見せる不思議な振る舞いのことです。
- 観測しない場合
粒子は「波」のように振る舞い、干渉パターンが現れます。 - 観測する場合
「どちらのスリットを通ったか」を観測すると、波の性質は消え、粒子のように振る舞います。
この結果は、「観測」という行為が、粒子の性質を変えてしまうことを示唆しています。
⏳ 遅延選択実験の登場
この奇妙な性質をさらに突き詰めたのが、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラーによって考案された「遅延選択実験」です。
この実験では、次のようなことが行われます。
- 粒子がスリットを通過した後で、「どちらのスリットを通ったか」を観測するかどうかをランダムに決定。
- 観測するかしないかで、過去に起こったはずの粒子の振る舞い(波か粒子か)が変わってしまう。
ここでの驚きは、観測のタイミングです。
通常なら、スリットを通過した後の粒子の性質は決まっているはず。しかし、遅延選択実験では、観測するかどうかを後から決めたにもかかわらず、その決定によって過去の振る舞いが変わってしまうのです。
🌀 未来が過去に影響を与える?
この実験の結果は、まるで未来の決定が過去の出来事に影響を与えているかのように見えます。
例えば、こんなシナリオです。
- 粒子はすでにスリットを通過した後。
- 後から「どちらのスリットを通ったか」を観測すると、粒子は「粒子」として振る舞ったことになります。
- 観測しなければ、「波」として振る舞ったことになります。
つまり、「観測」という未来の行為が、過去の出来事の性質を決めてしまうのです。この現象は、因果律(原因があって結果があるという常識)に反しているようにも見えます。
📌 では、過去は変えられるのか?
結論から言えば、遅延選択実験が示すのは、「過去そのものが変わる」のではありません。
むしろ、「過去の出来事が確定されるタイミング」が私たちの常識とは異なる、ということです。
要するに、こういうことです。
- 粒子がスリットを通過する瞬間、過去はまだ「未確定」の状態。
- 観測という行為によって、初めてその過去が「確定」される。
これは、私たちが「過去はすでに決まっている」という前提で考えていること自体が間違っているのかもしれない、という示唆です。
🌀 まとめ:観測が現実を作る?
遅延選択実験は、量子力学の世界における「観測」の重要性を強調しています。
私たちが「現実」と思っているものは、実は観測によって確定されるものであり、観測されるまでは「未確定」の状態にあるということです。
「過去は変えられるのか?」という問いに対する答えは、ある意味で「YES」です。
ただし、それはタイムマシンで過去を書き換えるという意味ではなく、「観測」という行為によって、過去がどのように確定されるかが変わる、という意味です。
量子力学が見せる奇妙な世界は、私たちが「時間」や「現実」をどう理解するべきかについて、深い問いを投げかけています。
あなたも、量子力学の不思議な世界に少し興味が湧いてきたでしょうか? 😎