はじめに
近年、日本では大腸がんの罹患率が増加しており、多くの研究者や医療機関がその要因を探っています。その中で、食生活の変化、特に小麦製品の摂取増加が大腸がんのリスクに関連しているのではないかという議論が出ています。本記事では、大腸がんの増加要因、小麦食との関係、そして予防策について詳しく掘り下げていきます。




https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2024_data_J.pdf
https://www.kenpo.gr.jp/sgh/contents/03hoken/cancer/gan/02.html
日本におけるがんの罹患率 大腸がんが男女合計で最も多い
日本におけるがんの罹患率の年代別推移を部位別に確認するためには、国立がん研究センターの「がんの統計 2024」
国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方向けサイトが有用です。
この資料には、2019年の部位別年齢階級別がん罹患数・割合および罹患率が掲載されています。
2019年のデータによれば、男女合計のがん罹患数の上位3位は以下のとおりです:
- 大腸がん:158,127人(15.9%)
- 胃がん:134,650人(13.5%)
- 肺がん:125,454人(12.6%)
また、2020年のデータでは、男女合計のがん罹患数の上位3位は以下のとおりです:
- 大腸がん:147,725人(15.6%)
- 肺がん:120,759人(12.8%)
- 胃がん:109,679人(11.6%)
これらのデータから、2019年および2020年において、大腸がんが男女合計で最も多く診断されていることがわかります。

会社員の死亡のなんと半分はがん 働き盛りの女性に増えているがん
がんは年齢とともに増えますから、老化の一種ではあります(生きているだけで遺伝子にキズが積み重なり、免疫細胞の働きも落ちます)。
しかし、若いからといってがんにならないわけではありません。
日本では、毎年およそ70万人が新たにがんに罹患していますが、その3分の1にあたる22万人が働く世代(20~64歳)です。会社員の死亡のなんと半分は、がんによるものです。
現役世代では、女性のがん患者数は男性を大きく上回ります。
働き盛りの女性のがんの罹患率は20代では男性の約1.6倍、30代では男性の約3倍に増えています。
1. 大腸がんの現状と増加の背景
1.1 日本における大腸がんの統計
日本において大腸がんは、がんの中でも特に増加傾向にある疾患のひとつです。厚生労働省の統計によると、近年の大腸がんの罹患数は男女ともに増加傾向にあります。
- 大腸がんの死亡率は、特に50代以降で急増し、高齢者の主要な死因のひとつとなっています。
- 罹患率の上昇は、生活習慣や食事の欧米化が関与していると考えられています。
1.2 欧米化した食生活の影響
日本人の食生活は、戦後の高度経済成長とともに大きく変化しました。伝統的な和食に比べ、以下のような要素が増えています。
- 脂質の多い食事(肉類・乳製品・揚げ物など)
- 加工食品の摂取増加
- 食物繊維の摂取不足(野菜・海藻・豆類の摂取減少)
- 高カロリー・高糖質の食事
こうした食事の変化は、腸内環境の悪化を引き起こし、大腸がんのリスクを高める要因となる可能性があります。
<引用論文>
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/54/2/54_2_71/_pdf?utm_source=chatgpt.com

2. 小麦食と大腸がんの関連性
2.1 小麦食品の消費増加と健康への影響
戦後、日本では小麦の輸入量が増加し、それに伴ってパン・パスタ・ラーメン・うどん・ピザなど、小麦を主原料とする食品の消費が急増しました。
小麦の主成分であるグルテンや精製された炭水化物が、腸内環境や健康に与える影響について、近年多くの研究が行われています。
2.2 小麦と大腸がんの関係に関する研究
現在のところ、小麦食品の摂取と大腸がんの発生率を直接結びつける決定的な研究結果はありません。しかし、いくつかの仮説が提唱されています。
- グルテン過敏症と腸内炎症
- グルテンが腸内の炎症を引き起こし、それが長期的に大腸がんのリスクを高める可能性がある。
- セリアック病(グルテン不耐症)の患者は、腸の慢性的な炎症ががんリスクを上昇させるとされる。
- 精製小麦と血糖値の関係
- 小麦製品(特に白パンやパスタ)は血糖値を急激に上昇させ、インスリン分泌の過剰を引き起こす。
- インスリンの過剰分泌は、がん細胞の成長を促進する可能性がある。
- 腸内細菌への影響
- 小麦由来の食品は、腸内細菌のバランスを崩し、悪玉菌の増殖を促す可能性がある。
- 腸内細菌の乱れは、大腸がんのリスクを上昇させると考えられている。
3.糖質と癌細胞の成長
がん細胞の成長には糖質が関係すると考えられています。がん細胞は通常の細胞よりも多くのブドウ糖(グルコース)を必要とし、エネルギーを作り出すために「解糖系」という経路を活発に使います。このため、「糖質を控えることでがん細胞の成長を抑えられるのではないか」という考え方があります。
白ご飯(精白米)も糖質の一種で、消化されるとブドウ糖に変わります。血糖値を急激に上げやすいため、がんの増殖リスクを高める可能性が指摘されています。ただし、がん治療における糖質制限の有効性については、まだ科学的に確立された結論が出ていない部分もあります。
また、糖質を極端に制限すると、健康な細胞にも影響を与え、エネルギー不足や栄養バランスの乱れを引き起こす可能性があります。糖質を抑える場合は、血糖値を緩やかに上げる玄米や全粒穀物に切り替えたり、食物繊維やたんぱく質を一緒に摂ることで血糖値の上昇を抑える方法が考えられます。
がんと糖質の関係については、個々の体調や状況に合わせて、医師や専門家と相談しながら調整するのが良いでしょう。
4.玄米が苦手な人は、五分づき米や七分づき米
五分づき米(玄米のぬか層を半分ほど削ったもの)なら、白米よりも血糖値の上昇が穏やかで、栄養価も高いため、良い選択肢の一つです。
五分づき米には、以下のようなメリットがあります:
- 血糖値の急上昇を抑える:食物繊維が残っているため、白米よりも消化吸収が緩やか。
- ビタミン・ミネラルが豊富:特にビタミンB群やマグネシウムが残っており、代謝をサポート。
- 玄米より食べやすい:消化しやすく、玄米の硬さが苦手な人にも向いている。
糖質制限を意識するなら、白米より五分づき米や七分づき米、玄米の方が適しています。ただし、完全に糖質を排除するのではなく、適度に摂取しつつ、たんぱく質や良質な脂質とバランスよく食べることが大切です。
また、食べる順番として野菜やたんぱく質を先に食べると、血糖値の急上昇を抑えやすくなります。