時間は不可逆性なのか エントロピー変化と映画『TENET』の関係


エントロピーとは何か?

エントロピーとは、物事がどれほど無秩序であるかを示す概念です。これは熱力学における重要な指標であり、エントロピーが増加するほど、物質やエネルギーの分布は乱雑になっていきます。

例えば、

  • 温かいコーヒーが自然に冷めることはあっても、冷めたコーヒーが自然に温かくなることはありません。
  • 割れたガラスが元通りに戻ることはありません。

このような現象は、エントロピーが増加することによって生じるものです。

なぜエントロピーは元に戻せないのか?

エントロピーは自然に増加する性質を持っています。一度増えたエントロピーを元に戻すことは極めて困難です。その理由を以下の三つに分けて説明いたします。

① 自然な流れとしてエントロピーは増加する

熱力学の法則によると、自然に進行する現象は基本的にエントロピーが増加する方向へ向かいます。たとえば、

  • コーヒーは時間が経つにつれて冷める(エントロピー増加)。
  • ガラスは割れると元には戻らない(エントロピー増加)。

逆のことが自然に起こる確率は極めて低いため、実質的に不可逆な現象と考えられます。

② エントロピーを減少させるにはエネルギーが必要

エントロピーを減少させることは可能ですが、それには外部からのエネルギー供給が必要です。

例えば、

  • 冷蔵庫は内部の温度を下げることでエントロピーを減少させますが、その過程で外部へ熱を放出するため、全体としてのエントロピーは増加しています。
  • 人間の生命活動も、体内の秩序を維持するために食事からエネルギーを得ていますが、その代わりに熱を放出し、結果として周囲のエントロピーを増加させています。

このように、エントロピーを局所的に減少させることは可能ですが、全体としてはエントロピーが増加することになります。

③ ミクロな世界では時間を逆行できても、マクロでは不可能

物理学の基本法則(ニュートン力学やシュレディンガー方程式)では、時間を逆転させても理論上は成立します。しかし、現実世界ではこのようなことは起こりません。

その理由として、

  • すべての粒子の運動を完全に逆転させることは現実的に不可能であること。
  • 熱や摩擦によってエネルギーが拡散し、元の状態に戻すことが極めて困難であること。

このような理由から、理論的には時間を逆行できたとしても、現実には時間は一方向にしか進まないのです。

映画『TENET』とエントロピーの関係

映画『TENET』では、「エントロピーを逆転させる技術」が登場し、時間を逆行する人や物が描かれています。

例えば、

  • 弾丸が銃に戻る。
  • 燃焼が逆転する。
  • 呼吸ができない(空気の流れが逆になるため)。

これは「エントロピーが減少している状態」と考えられます。しかし、現実の物理学においては、「エントロピーの減少」と「時間の逆行」は同じものではありません。

この映画はフィクションですが、「エントロピーの増減」という物理学の概念を巧みに取り入れた作品として興味深いものです。

まとめ

エントロピーとは、物質やエネルギーの乱雑さを示す指標であり、一度増加したエントロピーを元に戻すことは極めて困難です。その理由は以下の通りです。

  1. 自然の流れとしてエントロピーは増加し続ける。
  2. エントロピーを減少させるにはエネルギーが必要であり、その過程で別の場所のエントロピーが増えてしまう。
  3. 理論的には時間を逆行できたとしても、実際の世界ではそれは不可能である。

このように、エントロピーの増加は時間が一方向に進む理由の一つとして考えられているのです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です