映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』2023年アカデミー作品賞(ネタバレなし)その1

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All at Once)』は、2022年に公開されたアメリカのSFアクション映画です。監督はダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビ(通称「ダニエルズ」)。

斬新なストーリーテリングと圧倒的な映像表現で、2023年のアカデミー賞作品賞をを受賞し、さらに作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞の7部門を受賞したSFアクション・コメディ映画です(演技部門における三冠達成)。また、アカデミー賞の最多部門ノミネート(10部門、11ノミネート)でした。

加えて、A24製作映画としてはNo.1のヒット作です。
A24は、2012年に設立されたアメリカの映画制作・配給会社です。独立系映画を中心に、アートハウス映画やオリジナルのストーリーを重視した作品を多く手がけて、独特な視点や革新的なストーリーテリングで知られ、数々の受賞歴がある映画を配信しています。代表的な作品には、『ムーンライト』、『ミッドサマー』、『エイリアン: コovenant』や『スイート・ビター・バナナ』などがあります。

タイトルの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は「なんでも・どこにでも・いっぺんに」あるいは「すべてが、どこでも、一度に」といった意味になります。

つまり、この作品の舞台となる「マルチバース」(多世界解釈、多元宇宙)を表しています。

映画の概要

物語の主人公は、中国系移民のエヴリン・ワン(ミシェル・ヨー)。彼女はアメリカでコインランドリーを経営しながら、税務調査や家族の問題に追われる平凡な女性です。しかし、突如として“マルチバース(多元宇宙)”の存在を知らされ、無数の並行世界を行き来しながら世界の命運をかけた壮大な戦いに巻き込まれていきます。

エヴリンが訪れる別の宇宙では、彼女がカンフーマスターだったり、有名シェフだったり、さらにはホットドッグの指を持つ奇妙な生命体だったりと、突飛な展開が次々と繰り広げられます。そして、物語が進むにつれ、彼女は人生の意味や家族の絆、愛とは何かといった深いテーマに直面していきます。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の主なキャストは以下の通りです。

主要キャスト

  • エヴリン・ワン(Evelyn Wang) – ミシェル・ヨー(Michelle Yeoh)
    • 主人公。コインランドリーを経営する中国系移民の女性で、マルチバースの危機に巻き込まれる。
  • ウェイモンド・ワン(Waymond Wang) – キー・ホイ・クァン(Ke Huy Quan)
    • エヴリンの夫。優しく穏やかだが、マルチバースでは様々な顔を見せる。
  • ジョイ・ワン / ジョブ・トゥパキ(Joy Wang / Jobu Tupaki) – ステファニー・スー(Stephanie Hsu)
    • エヴリンの娘。母親との確執を抱えており、マルチバースの鍵を握る存在。
  • ゴン・ゴン(Gong Gong) – ジェームズ・ホン(James Hong)
    • エヴリンの厳格な父親。彼もまた、マルチバースに関わる重要なキャラクター。
  • ディアドラ・ボービアードレ(Deirdre Beaubeirdre) – ジェイミー・リー・カーティス(Jamie Lee Curtis)
    • 税務調査官。エヴリンの家族にとって大きな障害となるが、物語が進むにつれ意外な役割を果たす。
  • ビッグ・ノーズ(Big Nose) – ジェニー・スレイト(Jenny Slate)
    • エヴリンの顧客の一人。カオスなマルチバースの中でユニークな登場をする。
  • リッキー・レッド(Raccacoonie) – ハリー・シャム・ジュニア(Harry Shum Jr.)
    • シェフとして登場するキャラクター。某映画のパロディ的な役割を担う。

この映画では、キャストの多くが複数の役柄(異なる宇宙のバージョン)を演じるため、彼らの演技の幅が非常に広いのが特徴です!

映画のテーマ

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、単なるアクション映画ではなく、多くの哲学的テーマを含んでいます。

  1. 無限の可能性と選択の重み
    エヴリンが別の宇宙での「もしも」の人生を体験することで、私たちも「もし別の道を選んでいたら?」と考えさせられます。どの選択も無意味ではなく、自分が選んだ道にこそ意味があるというメッセージが込められています。
  2. 家族の絆と和解
    映画の中心にあるのは、エヴリンと家族の関係。特に、彼女と娘のジョイ(ステファニー・スー)との確執が物語の大きな軸となります。世代間の価値観の違いや、親子の愛と理解の難しさが描かれています。
  3. カオスと意味の共存
    映画はユーモラスでカオスな展開が多い一方で、「人生の意味とは?」という哲学的な問いも投げかけます。多元宇宙の中で何が本当に重要なのかを考えさせられる作品です。

見どころ

  • ミシェル・ヨーの圧巻の演技
    アクションからコメディ、感動的なシーンまで幅広い演技を見せるミシェル・ヨーの存在感は圧倒的です。
  • 独創的な映像とアクション
    カンフーシーンだけでなく、マルチバースの表現がとてもユニークで、まるでジェットコースターのような展開が楽しめます。
  • 予測不能なストーリー
    何が起こるかわからない驚きの連続。ユーモアと感動が絶妙に織り交ぜられています。

映画の感想

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、一言では語り尽くせない作品です。カオスな映像美の中に、人生哲学や家族愛といった普遍的なテーマが巧みに織り込まれており、観る人によってさまざまな解釈ができるでしょう。

本作のアクションシーンは、単なる派手なバトルではなく、登場人物たちの内面的な成長や関係性の変化を映し出しています。特に、最初は敵対関係にあった税務調査官ディアドラ・ボービアードレとエヴリンが、多世界のある世界線では恋人として描かれるという展開は非常に興味深いものでした。最も対立していた相手とすら、愛をもって接すれば関係が変わる——その示唆には深く考えさせられます。

また、本作では多次元宇宙(マルチバース)というSF的な要素を用いながらも、人間関係の複雑さや人生の選択について鋭く描いています。無数の可能性がある中で、エヴリンが最終的に選ぶ道は「今ここにある人生を受け入れる」こと。このメッセージは、多くの人の心に響くのではないでしょうか。

どんな可能性があったとしても、私たちが生きるのは「今」。本作は、そんな大切な気づきを観る者に与えてくれる、深遠で感動的な作品でした。

マルチバースをテーマにした映画の一部

  1. 『スパイダーマン:スパイダーバース』 (2018) – さまざまなスパイダーマンが異なる次元から集まり、共に悪と戦うアニメーション映画。
  2. 『ドクター・ストレンジ in マルチバース・オブ・マッドネス』 (2022) – MCUの一部で、異なる次元を旅するドクター・ストレンジの冒険が描かれていいる。
  3. 『Everything Everywhere All at Once』 (2022) – 平凡な主婦が異なる宇宙の自己と出会い、悪と戦う奇妙な物語。
  4. 『ザ・フラッシュ』 (2023) – 『ザ・フラッシュ』ではエズラ・ミラー演じるフラッシュ/バリー・アレンが何度も時間改変を行ったことで宇宙が崩壊し、宇宙同士が衝突するというクライシスが発生してしまっている。その中でDCの礎を築いた様々な宇宙と作品群を見ることができる。
  5. 『インターステラー』 (2014) – 宇宙旅行をテーマにしつつ、時間や次元の概念を探求するSF映画。

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