日本の大学生はなぜ勉強しないのか

はじめに

かつて「大学=勉強」というイメージが強かった時代は過ぎ去り、現代の大学生は必ずしも勉強に熱心ではないという現実があります。代わりに「就職のための資格取得」や「人脈作り」、「青春を楽しむ」など、多様な目的で進学する学生が増えています。

なぜ、これほどまでに「勉強しない大学生」が増えたのか。その背景には、社会の変化や教育制度、学生自身の価値観の変化があると考えられます。

本記事では、大学生が勉強しなくなった理由と、その改善策について深掘りしていきます。


1. 大学生が勉強しない理由

1-1. 就職活動が目的化している

日本の就職活動は、学歴や所属大学のブランドが重視されやすい傾向があります。そのため、「大学を卒業すること」自体が目的化し、学ぶことそのものへの意欲が低下しています。
例: 「とりあえず有名大学に入っておけば就職に有利」という風潮があり、実際に就職活動では学歴フィルターが存在することも少なくありません。

1-2. 講義がつまらない問題

大学の講義が一方的であり、学生にとって興味を引かない内容であることも一因です。特に、実生活に役立たないと感じる科目に対してはモチベーションが低下します。
例: 経済学部の学生が「微分積分の講義は将来役に立たない」と感じ、出席だけしてスマホをいじるといった光景も珍しくありません。

1-3. 受験の反動と自由の謳歌

高校までの詰め込み型の受験勉強の反動で、大学での自由を楽しもうとする学生が増えています。バイトやサークル活動、旅行など、学業以外に時間を割く学生が多いのです。
例: 「せっかく受験勉強を頑張ったんだから、大学では遊びたい」という声はよく聞かれます。


2. 具体的な目標がないことの問題

2-1. モチベーションの欠如

将来の目標がはっきりしていないと、「何のために勉強するのか」が見えず、やる気が湧きません。
例: 「なんとなく経済学部に入ったけど、将来何がしたいかわからない」という学生は、成績も低迷しがちです。

2-2. キャリアパスの不透明さ

就職先やキャリアパスが漠然としていると、勉強の意義も曖昧になります。日本の新卒採用では「総合職」として採用されることが多く、特定のスキルが求められにくいことも影響しています。
例: 法学部に進学したものの、弁護士になる気はないという学生は、専門科目の勉強に消極的です。


3. 勉強に打ち込む学生の特徴

3-1. 明確な目標がある学生

一方で、研究や資格取得に熱心な学生もいます。これらの学生は、将来のビジョンが明確であり、そのために必要な知識やスキルを得ようとします。
例: 起業を目指す学生はビジネス関連の講義に真剣ですし、理系学生は研究室で忙しい毎日を送っています。

3-2. 自己効力感の高さ

「やればできる」という自己効力感がある学生ほど、積極的に勉強に取り組みます。これは、小中高での成功体験や、家庭での教育方針に影響されます。
例: 中学時代に英語で好成績を取っていた学生は、大学でも英語に積極的です。


4. 改善策と提案

4-1. 大学入学の意義を見直す

大学は勉強するための場所であるという意識を取り戻すべきです。そのためには、入学前に「なぜ大学に行くのか」を明確にする仕組みが必要です。
提案: 高校でキャリア教育を充実させ、大学で学ぶことの意義や必要性を理解させる。

4-2. 偏差値と入試の廃止

偏差値や入試制度は、「とりあえず大学に入る」という風潮を助長しています。これを廃止し、興味や適性に基づく選抜方法を検討すべきです。
提案: 面接やプレゼンテーションを重視した入試制度への移行。やりたいことが明確化している人を積極的に採用する

4-3. 高卒でも活躍できる社会の構築

学歴で評価されない社会を作り、高卒でも大企業で活躍できる環境を整える必要があります。
提案: 大企業の高卒採用枠(30%など)を義務付ける


5. 高校教育の見直し

5-1. 高校を義務教育化する

高校までを義務教育とし、高校教育により専門的な学びを取り入れることで、早い段階から進路を意識させます。
提案: 高校でのインターンシップや専門科目の必修化。今の大学のように、よりやりたいことに細分化していく。

5-2. 専門性を持たせたカリキュラム

高校の3年間で、自分の得意分野や興味に応じた学びを提供し、大学進学への準備を整える。
例: プログラミングに興味がある学生には、実践的なIT教育を行う。体育が好きな学生は体育ばかりやる。医者を目指している学生はその勉強を取り組む。今の受験のための暗記詰め込み教育はもうやめる。


6. 学びの本質を考える

6-1. 学びの目的とは何か

大学での学びは、単に就職のためではなく、自己を深めるためのものであるべきです。そのためには、哲学や倫理、道徳といった教養科目の充実も重要です。
例: フィンランドでは、大学での教養教育が重視され、学生の満足度も高い。

6-2. 社会に出てからの学びの継続

大学はゴールではなく、社会に出てからも学び続ける力を育む場所です。生涯学習の考え方を広める必要があります。人生一生勉強だという考えを植え付ける。
提案: 卒業後も利用できるオンライン講義や、OB・OGとの交流機会の充実。就職して最初の3年間は週休3日制にして2日は学校に行く(ドイツの「デュアルシステム」)など


まとめ

大学生が勉強しない理由は、就職活動のための学歴重視や、講義の魅力の欠如、受験の反動など、多岐にわたります。これに対しては、大学入学の意義の見直しや偏差値廃止、高校教育の充実といった対策が考えられます。大学は単に就職のための通過点ではなく、自己を成長させる場所であるべきです。
学びの本質を見直し、学生が本当に学びたいことに取り組める環境を作ることが、これからの大学教育に求められる課題です。

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