1. はじめに
アルゼンチンは長年にわたり経済危機に直面してきましたが、2023年末にハビエル・ミレイ氏が大統領に就任し、大胆な経済改革を進めています。本記事では、ミレイ政権の経済政策、改革の内容、それに伴う効果や課題、そして2025年以降の経済成長の見通しについて詳しく解説します。
2. ミレイ大統領の経済改革の背景
アルゼンチン経済は、長期間にわたるインフレ、高い財政赤字、政府の過剰な介入、過大な補助金政策などの問題を抱えていました。これにより、アルゼンチン・ペソは急激に価値を失い、国民の生活は困窮していました。ミレイ大統領は、これらの問題に対処するため、市場経済を重視した急進的な改革を掲げて選挙に勝利しました。
3. 主要な経済改革の内容
ミレイ政権は、以下のような経済改革を推し進めています。
3.1. 政府支出の大幅削減
- 政府機関の縮小:省庁数を22から9に削減し、10の省庁と100以上の政府機関を閉鎖。
- 公務員の削減:約34,000人の公務員を解雇し、公共部門の人員を10%削減。
- 補助金の削減:電気・ガス・水道などの公共サービス補助金を大幅削減し、市場価格へ移行。
3.2. 税制改革
- 税収の削減:政府の介入を減らすため、90%の税収削減を目指す。
- 州間の税制競争:地域ごとの経済発展を促進。
3.3. 通貨・金融政策
- 中央銀行の廃止を計画:ペソの信頼回復とインフレ抑制のため、中央銀行の役割を見直し。
- 通貨の自由化:ドルや他の通貨の使用を認める政策を検討。
3.4. 国営企業の民営化
- アルゼンチン航空の民営化:政府の財政負担を軽減し、効率的な経営を推進。
- その他の国営企業の売却も計画中。
3.5. 財政収支の黒字化
- 緊縮財政の徹底:2024年1月に12年ぶりの財政黒字を達成。
4. 経済改革の効果
4.1. インフレ率の低下
ミレイ政権発足当初、インフレ率は25.5%(2023年12月)に達しましたが、その後、2024年1月には20.6%、2月には13.2%へと低下しました。
4.2. 通貨の安定
ペソの公式為替レートと非公式為替レート(闇市場)の差が縮小。
4.3. 国債金利の低下
政府の緊縮財政政策とインフレ抑制策により、アルゼンチンの国債金利は低下傾向に。
4.4. 外国投資の増加
財政健全化により、海外からの投資が回復。
4.5. 経済成長の変動
- 2024年のGDP成長率はマイナス:第1四半期-5.2%、第2四半期-1.7%、第3四半期-2.1%と連続してマイナス成長。
- 2025年以降の成長予測はプラスへ転換。
5. 2025年以降の経済成長の見通し
5.1. 各機関の予測
- アルゼンチン中央銀行の調査(2024年11月):2025年の実質GDP成長率は4.2%と予測。
- 政府の予算案(2024年9月):2025年のGDP成長率は5.0%と見込む。
- 民間機関の予測:BBVAは5.5%、ゴールドマン・サックスは3.5%と予測。
5.2. IMFの見解
IMFはアルゼンチンの経済安定化を評価しつつも、「回復は不確実で不均衡」と指摘。
5.3. 成長の要因
- インフレのさらなる抑制。
- 投資環境の改善。
- 民間主導の経済活性化。
6. 社会への影響と課題
6.1. 生活コストの増加
補助金削減により、電気・水道・ガス料金の値上がりが庶民に負担。
6.2. 失業率の増加
公務員削減に伴い、短期的に失業者が増加。
6.3. 貧困率の上昇
2024年時点で貧困率は50%を超え、社会的不満も拡大。
6.4. 政治的リスク
急進的な改革に反発する勢力が多く、政権の安定性に懸念も。
7. まとめ
ミレイ政権の経済改革は、大胆な緊縮財政と市場経済の導入により、短期的な経済混乱を引き起こしました。しかし、財政黒字の達成、インフレ率の低下、投資環境の改善など、一定の成果も見られます。
今後、2025年以降の経済成長が期待されるものの、庶民の生活負担増加や貧困率上昇などの課題をどう克服するかが鍵となるでしょう。今後のアルゼンチン経済の行方に注目が集まります。
ニュース記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/de5bcb0133b5289aeb2c003266343f4f86cc0e4b
https://news.yahoo.co.jp/articles/e186b15767646b57874134fea99e0c542995c41a
https://news.yahoo.co.jp/articles/7f815b78a0b81463d903e7e8050203e0165fffff
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