(1)現代社会は依存症だらけ! 依存症の種類と基準

1.現代社会の依存症の種類

現代社会における依存症は、従来のアルコールや薬物といった物質依存だけでなく、行動依存(プロセス依存)も大きな問題となっています。以下、それぞれ詳しく解説します。


1. 物質依存(Substance Addiction)

① アルコール依存症

アルコールを過剰に摂取し続け、やめられなくなる状態。長期間飲酒すると耐性ができ、より多くの量を必要とするようになり、禁酒すると禁断症状(震え、発汗、不安、幻覚など)が現れる。社会的な問題(家庭崩壊、失職、事故)にもつながりやすい。

② ニコチン依存症(喫煙・電子タバコ)

タバコや電子タバコに含まれるニコチンに対する依存。ニコチンは脳内のドーパミンを活性化し、一時的な快楽をもたらすが、長期的には健康に悪影響を及ぼし、肺がんや心血管疾患のリスクを高める。

③ 薬物依存症(ドラッグ・処方薬依存)

違法薬物(覚せい剤、大麻、コカイン、ヘロインなど)や、処方薬(鎮痛剤、抗不安薬、睡眠薬など)への依存。特に近年、医師が処方するオピオイド系鎮痛薬への依存が世界的に問題となっている。

④ カフェイン依存症

コーヒー、エナジードリンク、紅茶、チョコレートなどに含まれるカフェインに依存する状態。長期間摂取すると耐性ができ、摂取をやめると頭痛、疲労感、イライラなどの禁断症状が出る。

⑤ 食品依存症(ジャンクフード依存)

高糖質・高脂肪の食品(ファストフード、スナック菓子、清涼飲料水など)を過剰に摂取し続けることで、脳の報酬系が刺激され、やめられなくなる。肥満や糖尿病のリスクが高まる。

⑥ 砂糖依存症

砂糖依存症とは、糖分を摂取することで脳が快楽を感じ、それを繰り返し求める状態のことを指します。
これは、砂糖が脳の**報酬系(ドーパミンシステム)**を刺激し、依存性を生むためと考えられています。
また、血糖値の急激な変動によって、さらに砂糖を欲する悪循環が生じることも関係しています。

⑦ グルテン依存症

グルテン依存症とは、小麦などに含まれるグルテンに対して依存的な状態になることを指します。これは医学的に正式な病名ではありませんが、一部の研究や健康業界では、「グルテンが脳内で依存性を引き起こす可能性がある」と考えられています。


2. 行動依存(プロセス依存 / Behavioral Addiction)

物質を摂取するのではなく、特定の行動に対して強迫的に依存する状態。

① スマホ・SNS依存

スマートフォンやSNS(X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、Facebookなど)を常にチェックしないと落ち着かない状態。通知が来るたびにドーパミンが分泌され、一時的な快感を得るが、リアルな対人関係が希薄になったり、睡眠障害を引き起こしたりする。

② ゲーム依存

オンラインゲームやコンシューマーゲームをやめられなくなる状態。特にMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)など、終わりがないゲームは依存性が高い。生活リズムの崩壊、社会生活の困難、課金による経済的負担が問題となる。

③ ギャンブル依存、オンラインカジノ依存、パチンコ依存

パチンコ、スロット、競馬、競輪、カジノ、オンライン賭博などへの依存。負けても「次こそは勝てる」という心理に囚われ、大金をつぎ込んでしまう。生活破綻、借金、家庭崩壊など深刻な問題を引き起こす。

④ 買い物依存症(ショッピング依存)

不必要なものを大量に購入してしまう衝動的な行動。特にオンラインショッピングの普及により、簡単に購入できる環境が整い、依存しやすくなっている。経済的な負担や精神的なストレスにつながる。

⑤ セックス・恋愛、DV依存症

セックスや恋愛に対して異常に執着し、常に恋愛関係を求めたり、性的関係を持とうとする状態。感情の起伏が激しくなり、人間関係に大きな影響を及ぼす。

⑥ 仕事依存(ワーカホリック)

仕事をし続けないと不安になり、休息をとることができなくなる状態。生産性が落ちるだけでなく、家庭や健康にも悪影響を与え、バーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こすことがある。

⑦ 運動依存(エクササイズ依存)

適度な運動は健康に良いが、運動をしないと落ち着かなくなるほど過度に行うのは問題。筋トレやランニングなどを極端に行い、体調を崩したり、怪我をしても運動を続けたりする。

⑧ 自傷行為依存

リストカット、皮膚を引っ掻く、髪の毛を抜くなどの自傷行為を繰り返してしまう状態。ストレスの解消や感情のコントロールのために行われることが多いが、次第にエスカレートしやすい。

⑨ 承認欲求依存

SNSの「いいね」やフォロワーの数に強く依存し、自分の価値をそこに見出す状態。他人の評価が気になりすぎることで、精神的なストレスや不安が増す。

⑤ 浮気依存

浮気依存症は浮気をすることでのスリル、ドキドキ感を忘れられずに、浮気を繰り返してしまう依存症です。


3. 現代特有の新しい依存症

① インフルエンサー依存

特定のYouTuber、TikToker、配信者のコンテンツを過剰に消費し、影響を受けすぎる状態。自分の価値観がなくなり、他者の意見に流されやすくなる。

② AIチャット依存

ChatGPTやAIアシスタントとの会話に依存し、現実世界でのコミュニケーションが減少する問題。AIが親密な対話を提供するため、孤独感を紛らわす手段になりやすい。

③ 仮想通貨・投資依存

株式投資やFX、仮想通貨の取引をやめられず、相場を常にチェックし続ける状態。過度なリスクを取ってしまい、大きな損失を出すこともある。

④ サブスク依存

Netflix、YouTube Premium、Amazon Primeなどのサブスクリプションサービスを大量に契約し、過剰に動画・音楽・書籍を消費し続ける状態。

現代の依存症は多様化し、日常生活に密接に関わるものが増えています。依存症は単なる「意志の弱さ」ではなく、脳の仕組みに関わる問題であり、周囲の理解と適切な対処が必要です。依存に気づいた場合は、環境の見直しや、場合によっては専門家のサポートを受けることが重要です。

2.依存症の診断基準とは

1. DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)による依存症の診断基準

DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)では、物質使用障害(Substance Use Disorder)や行動依存(ギャンブル依存など)を診断する際に、以下の11項目のうち 2項目以上 に当てはまると「軽度」、4~5項目 で「中等度」、6項目以上 で「重度」と診断されます。

DSM-5の診断基準(物質依存を例に)

  1. 使用量の増加:当初の意図よりも多くの量を摂取してしまう。
  2. 自己コントロールの失敗:やめようと試みても、使用をやめられない。
  3. 時間の浪費:依存行動に多くの時間を費やしてしまう。
  4. 渇望(Craving):強い欲求や衝動を感じる。
  5. 役割の放棄:仕事や家庭、学業に悪影響を及ぼす。
  6. 対人関係の悪化:家族や友人との関係が悪化しても続ける。
  7. 活動の減少:趣味や社交活動を放棄する。
  8. 危険な状況での使用:運転中や危険な環境でも使用する。
  9. 精神的・身体的悪影響:健康を害しても続ける。
  10. 耐性の形成:同じ量では満足できず、より多くの量を求める。
  11. 禁断症状:使用をやめると体調が悪化する(震え、不安、不眠など)。

ギャンブル依存やゲーム依存などの行動依存も、「自己コントロールの喪失」「生活への悪影響」「時間の浪費」「渇望」 などが診断の基準になります。


2. ICD-11(世界保健機関の国際疾病分類第11版)による依存症の診断基準

ICD-11(WHOの診断基準)では、依存症(依存性障害)を診断するために、以下の3つの主要な基準が使われます。

  1. コントロールの喪失:使用や行動を調整できない(頻度、開始・終了のタイミング、持続時間など)。
  2. 優先順位の変化:生活の中で依存行動が最優先になり、他の活動(仕事、家庭、人間関係など)を犠牲にする。
  3. 継続的な使用:身体的・精神的な悪影響が明確になっても、使用を続ける。

この3つが 12か月以上続く 場合に「依存症」と診断されることが多いが、重度の場合は 短期間でも診断 される。


3. 行動依存(スマホ依存・ゲーム依存など)の診断基準

物質依存ではなく、ゲームやスマホなどの行動依存に関しては、WHOが「ゲーム障害(Gaming Disorder)」としてICD-11に正式に分類しました。診断基準は以下の3つ。

  1. ゲームのコントロールができない(プレイ時間、頻度、終了タイミングなど)。
  2. ゲームが生活の中心になり、他の活動(学業・仕事・家庭)を犠牲にする
  3. 悪影響が出てもやめられない(生活、健康、社会的関係に問題があっても続ける)。

これが 12か月以上続く場合、ゲーム依存症と診断される。

スマホ・SNS依存、買い物依存、ギャンブル依存なども、「自己コントロールの欠如」「生活への悪影響」「過剰な頻度」 などの共通する特徴が見られる。


4. 依存症の診断でよく使われる補助的な基準

医療機関や専門家が診断する際に使う追加基準もある。

① 強迫性(Compulsivity)

  • 理性では「やめたい」と思っているのに、行動が止められない。
  • たとえば「今日はゲームを2時間でやめよう」と決めても、結局5時間以上やってしまう。

② 禁断症状(Withdrawal)

  • やめると精神的・身体的に不調が出る。
  • 例:アルコール依存→禁酒で手の震え、パニック、イライラ。
  • 例:スマホ依存→スマホがないと落ち着かず、不安になる。

③ 耐性(Tolerance)

  • 最初は少量・短時間で満足していたのに、どんどん増える。
  • 例:カフェイン依存→最初は1杯で目が覚めたのに、3杯飲まないとスッキリしなくなる。

④ 生活への悪影響

  • 仕事・学校に遅刻・欠勤する。
  • 家族との関係が悪化する。
  • 金銭トラブル(借金、無駄遣い)。

5. 依存症のチェック方法(簡易自己診断)

CAGEテスト(アルコール依存の簡易診断)

アルコール依存をチェックする簡易テストで、4つの質問のうち2つ以上当てはまると依存の可能性が高い

  1. C:Cut down(減らそうとしたができなかった)
  2. A:Annoyed(飲酒を批判され、イライラしたことがある)
  3. G:Guilty(罪悪感を感じたことがある)
  4. E:Eye-opener(朝から飲酒したことがある)

ゲーム依存チェックリスト

以下のうち 5つ以上当てはまると、ゲーム依存の可能性が高い

  • 毎日3時間以上ゲームをしている
  • 学校・仕事よりもゲームが大事になっている
  • 食事や睡眠時間を削ってまでゲームをする
  • やめようと思ってもやめられない
  • 親や友人にゲームを制限されると強く怒る

まとめ

あなたの基準(1. 頻度が過剰 2. 自己コントロールが効かない 3. 生活・金銭面の崩壊)は、DSM-5・ICD-11の診断基準と一致しています。さらに、以下のような追加基準も重要です。

  • 強迫性(理性ではやめたいが止められない)
  • 禁断症状(やめると不安・イライラ・体調不良)
  • 耐性(どんどん使用時間・量が増える)
  • 生活の悪影響(仕事・家庭・人間関係に問題)

依存症は、「楽しんでいる」段階を超え、「止められない」「やめると苦しい」「生活に支障が出る」状態になると要注意です。

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